のんびり読書記録

自分がこれまで読んだ漫画、小説、ビジネス書等、マイペースにのんびりと書いていきます。

【書評】スーツケースの半分は

 どうも。takaです。今回の記事では、近藤史恵氏の小説、「スーツケースの半分は」(祥伝社文庫)を読んだ感想を書いていきたいと思います。

あらすじ

 以前から海外旅行に行ってみたいけど、なかなか行けず、心の中が満たされていない女性が、フリーマーケットでブルーのスーツケースを偶然見つけ、その魅力に魅かれて購入し、スーツケースから勇気をもらって海外へ旅立つ。これが一部です。二部以降はスーツケースは女性の友人の手に渡り、スーツケースは世界を回ります。

 この作品は短編で、語り手は部ごとに違いますが、出てくるスーツケースは同じです。

幸運をもたらすスーツケース

 色々な人の手に渡っていくスーツケースですが、このスーツケースは、持っている人の心をスッキリさせてくれます。

 この話に出てくる人達は、現状の生活が恵まれていないと思っている訳ではないのですが、将来の不安など、心の中はどこか満足していない所があります。

 しかし、スーツケースを手に旅をすることで、心の中のモヤモヤが取れ、前を向いて歩いて行く決心をする姿が描かれます。

海外旅行を経験したくなる

 この作品を見て一番思ったことは、「一度でいいから海外に行きたい」です。

 昔SNSで中学の知り合いが海外旅行をしている様子を投稿しているのを見て、自慢しているように見えて劣等感を抱いていたことがぶり返してきました。

 海外旅行を実行するにおいて、「お金が貯まってから」「まとまった休みが取れてから」と考えていると、どんどん先延ばしになってしまうと思います。本当にお金が無いのであれば仕方が無いのですが、誘惑が多いこのご時世でお金なんてなかなか貯まらないし、まとまった休みが取れた時にはそんなこと忘れてしまっている可能性があります。

 これは旅行はお金が多くかかるが故に完璧さを求めてしまうからなんじゃないかなと思います。しかし、完璧を求めると結局最後まで行動に移さないなんてことはよくあります。それに、旅行も他のことと同じで、入念に準備をしたとしてもいざ初めての場所に行ったら知らないことばかりで戸惑うなんてことは当たり前のようにあります。満足を求めるのはある程度経験してからが望ましいと思います。

 一度でもやったことがあるのと無いのとでは、天と地ほどの差があります。未知の文化を肌で感じるのはとても貴重な経験だと思うので、1泊でもいいからまずは行きたいですね。

 ただ、経験したからといって周りからすごい賞賛を受ける訳ではないので、自分はすごいと勘違いしないようにはしたいです。

 

 この本は少しでも海外に興味を持っていたらお勧めです。

【書評】盲目的な恋と友情

 どうも。takaです。今回は辻村深月氏の作品「盲目的な恋と友情」についての感想を書いていきたいと思います。

 

 

あらすじ

 タカラジェンヌの母を持つ一瀬蘭花は自分の美貌に無自覚で、恋も知りませんでしたが、大学時代、オーケストラとして迎えられた茂実星近との出会いが人生を変えることになります。茂実との恋愛に溺れる蘭花でしたが、彼の裏切りを知り、ある日終焉を迎えることに。

 その二人の歳月を蘭花の友人として見つめてきた傘沼留利絵の目からは別の真実が見えることに。

 女性二人の視点から恋愛、友情を描いた作品です。

 

相手の人間関係に口を挟みたくなるのが分かる

 留利絵は蘭花と違って容姿に恵まれず、小学生時代から容姿のことでよく男性にからかわれていました。大学に入って蘭花と知り合い、友人になったのですが、茂実との恋愛に溺れて周りが見えなくなってしまった蘭花は次第に苛立ちを募らせてはっきりと別れるべきだと言うようになります。

 世間ではよく「自分が誰と絡もうがそんなの勝手」と言います。そう言われたらそれまでになってしまうし、そうなんでしょうけれども、この作品を読んでいると口を挟みたくなる人の気持ちが本当に分かります。自分も読んでいて「さっさと縁切れよ」と何度も言いたくなりました。

 では、なぜ人間関係に口を挟みたくなるのか?というと、自分の考えとしては相手が見ている視点が思いっきり違うことからだと思います。

 友人がプラスの方向に見ているのだとしたら、自分はマイナスの方向で見ている。そして人は友人関係もそうですが、相手から優しくされたり肯定されると周りが見えなくなって視界が狭くなりがちです。だから他人の言っていることの方が正しいことが多々あります。宗教とかそうですね。あとオンラインサロンとかセミナーもそうだと思います。ホリエモン教だとか揶揄されるし。

 

 私の体験談としましては、ある日職場で後輩の女性が「人情味があるから○○さんのこと大好きなんですよ~」「○○さんと私仲良いんですよ~」とか私に言ってきたことがありました(名前は伏せます)。

 それに対して余計なことだったと思いますが後々知って傷付かないように警告の意味で「○○さんはああ見えて割り切る所は割り切ってる、ドライな人ですよ。だからあなたのことを友人とまでは思っていないと思います」とはっきり返しました。職場は労働の対価としてお金を受け取る所。お金貰えなかったら絶対来ませんからね。

 

 まあ、その後自分が言ったことを告げ口されて本人に怒られたのでもうしないと決めましたけど。

 

 とにかく、意見に耳を傾けるかどうかは本人が決めることだし、気付かなかったことに気付かせてくれることもあるので選択肢を増やすという意味合いで、外野が口を挟むのは全然非難されることじゃないんじゃないかなと思います。

 

 この作品は容姿に恵まれた女性、恵まれなかった女性の二人視点で描いた作品で、すごい人間関係がリアルに感じられるのでお勧めです。

【書評】青の炎

 どうも。takaです。今回は貴志祐介氏の「青の炎」についての感想を書いていきたいと思います。

 

 

ストーリー

 湘南の高校に通う櫛森秀一は、女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との三人暮らし。そんな平和な家庭に母が再婚し、すぐ別れた男が入ってきて居座るように。三人の幸せを邪魔するこの男をどうにかしないといけない。しかし、警察にも法律にも頼ることが出来ないと知った秀一は、自分の手でこの男を殺すことを決意します。

 

犯人メインのミステリー

 この作品はミステリー小説に分類されていますが、犯人が誰なのかではなく犯人がどうやって警察に気付かれることなく人を殺すか?もし実際に人を殺すのであれば誰もが考えるであろうことを描いているので感情移入しやすく、リアルっぽさが出ています。

 

なぜ殺人はいけないのか

 作中で秀一の友人が「瞋恚は、三毒の一つ。一度火をつけてしまうと瞋りの炎は際限なく燃え広がり、やがては、自分自身をも焼き尽くすことになる」と言っているシーンがあります。

 つまり、怒りを爆発させてしまうと抑えることは出来なくなり、自分すら滅ぼしてしまう。

 秀一は周到に計画を練り、男を殺すことに成功します。これで元通りの生活になる。と思いきや殺した時に尾行されていたことに気付かず、そのことを知られてしまったことで強請ってきた幼馴染も殺してしまいました。しかも一回目に比べて躊躇いも感じず殺す選択肢を選びました。しかし、秀一は喜ぶという気にはならず、むしろ心が壊れ始めていきます。

 ここで思うのは、殺人が決してやってはいけないと世の中で言われているのは、人の命は誰にも奪う権利が無いからというのではなく、人を殺した所で心がスッキリすることなんてなく、いつ自分の元に警察が来るのかという恐怖だったり、生涯人殺しという不名誉なものが付きまとうことで心を苦しめる。

 つまり、自分の首を絞めるだけにしかならないから殺人はやってはいけないものだと思うのです。

 そして、どんなに完璧な計画だと思った所で警察は時間がかかってもいずれ真相に辿り着く。だから一生逃げのびることなんて絶望的であることも肝に銘じておきましょう。

 

 ぜひお勧めしたい本です。

【書評】AX アックス

 どうも。takaです。今回はこちら、伊坂幸太郎氏の作品「AX アックス (角川文庫)」について書いていきたいと思います。

 

ストーリー

 主人公「兜」は普段は営業マンですが、超一流の殺し屋。しかし、家では妻には頭が上がらず、息子からも呆れられています。

 引退したいと考えつつもお金の為に続けている殺し屋の仕事。そのことを家族には知らせておらず、家族の知らない中で物騒な世界に生きる。そんな彼の物語です。

人生はやり直せるのか?

 以前は不良だった人が更生して真面目に働くようになる。それが美化されている節があります。

 しかし、はたして本当にそうなのか?と思います。例えば「こち亀」の42巻で昔ワルやっていた人が更生したのを見て褒める中川達に対し、両津はバッサリ斬ります。

 

出典:秋本治 こちら葛飾区亀有公園前派出所 42巻 集英社

 両津の言う通り、こういった人間が賞賛されたら被害に遭った人は怒りに震えると思います。殺人を犯した人が刑務所に入って更生して社会に復帰したとしても、殺された人の遺族は殺された身内の人生を奪ったのだから一生許す気になんてなれないでしょう。

 漫画「H2」に出てくる広田はより楽して勝つために故意にバッターにぶつけたりしていて、肘を壊して野手に転向してからはそういったプレーはしなくなりました。それを立派だと言うべきか?と言われたら決して立派ではありません。

 なぜなら更生した所で彼のせいでたった一度の高校野球を台無しにされた人達の時間は巻き戻らないからです。

 兜は殺し屋として多くの人間を殺めてきました。殺された人の中にも自分と同じ家庭を持っている人もいたことでしょう。だから殺し屋を辞めてまともな人生を送りたいと思ってもそれが許されるのか?そういった葛藤も描かれています。

 

 やっぱり両津の言う通り、最初からワルをやろうなんて考えず、真面目にやっているのが正解だと思います。

上手くいく家庭とは?

 妻の尻に敷かれる家庭、亭主関白な家庭でも上手くやっていっている家庭というのは、片方が嫌々従っているからなのではなく、そこに思いやり、信頼関係があるからなのだと思います。

 兜がボルタリングで知り合った男性は主人公と同じで奥さんには頭が上がりませんでしたが、それが溜まりかねてその不満が爆発して故意ではないものの、殺人を犯してしまいました。
 それに対して兜が不満に思うことはあっても離婚しようと思わなかったのは、妻は怖いけど妻も仕事をしているし、子供の世話もしているから大変であると認識していること、そして不満以上に家族を愛していたからです。

 不満があったとしても受け入れることが出来るか否か、相手を思いやっているか信頼しているか、不満より愛情が上回っているか、それが二人の違う所だと思いました。

 

 色々教訓になることが書かれているのでぜひお勧めします。