【小説】わたし、定時で帰ります。|自分の生き方を守るための戦い
人は大人になったら生計を立てるためにどこかの会社に就職し、働く。
今は就職しないで生計を立てる手段もあるにはあるけど、基本的にはそう。
しかし、働き方は会社によって違ってくる。長時間残業が当たり前の職場だったり、みんなが残業しているから帰れない雰囲気で仕方なく残業したり、そんな中で何があっても定時で帰ることを信条としている会社員を描いた作品が『わたし、定時で帰ります。』
定時で仕事を切り上げて居酒屋でお酒を飲み、店長や常連との会話を楽しむ。それを生きがいにしている主人公・東山由衣の姿を見ていると、自分も仕事をしながらも譲れない生き方を持ちたい気持ちが強くなっていきます。
以下では『わたし、定時で帰ります。』の見所をピックアップ。
多少のネタバレがありますのでご了承下さい。
わたし、定時で帰ります。の見所
【1】年配の人から若い人達のあるあるが描かれている
本作品の一番の見所は、年配の人から若い人まで、読んでみると「こんなことあったな~」と思うことが出来る所です。
私は平成生まれなので見たこと無いですが、バブル期には「あなたは24時間働けますか」というフレーズがあり、勤労礼賛の風潮がありました。
だからか、作中に出てくるの年配の人達は長時間残業して身を削って働くことが当たり前で、定時に帰る由衣のことを快く思っていない描写があります。
それに対して出てくる20代の若い人は「残業しないで早く帰りたい」「年配の考え方は古い」と思っています。
これは現実でもよく見かける光景。私は仕事を生きがいにしたくはないのに上司に自分を追い込むまで働けとか言われていましたし、うんざりでした。
そのため、この作品は色々な年代の人が読んでも共感出来ると思います。
【2】定時で帰ることは称賛されるもの
定時とは、その時間からその時間までは絶対に働いていなければいけない時間。それを過ぎれば契約外になるので後はどうしようが本来は自由。
残業してしまうとその分残業代を支払う義務が生じるため人件費がかさんでしまい、会社にとっても余計な出費になってしまうし、オフィスの電気代、夏や冬なら冷房やクーラーを稼働させるため光熱費も高くなってしまいます。
定時で帰るということは自分でスケジュールの調整が出来ている人、すなわち考えて動くことが出来る人なので本来は残業する人より評価されなければいけないのです。
今は法律も厳しくなっていることや、効率が求められているので残業はむしろ自己管理が出来ていないという烙印を押されてしまいます。
【感想】働き方は他人ではなく自分が決めるもの。
この作品は、由衣の同僚が由衣の働き方について文句を言うことが多かったのでその部分に目が行きがちでした。それで思ったこと。それは自分の働き方を他人に強要するのは絶対にやってはいけないことです。
作中では由衣の働き方を非難するキャラが多いですが、読んでいて気分が悪くなりました。
由衣が務めている会社の社長は、『会社のために自分があるんじゃない、自分のために会社がある』と言っています。
会社は自分の人生を充実させるために利用するもの。もちろん仕事をサボって良いという訳ではなく、どういう生活をしたいか?それを軸に働き方を決める。
そして辛いのならいつでも辞めて良い。
成果を出して出世したり、それを手土産により良い会社に転職するために働くのも良し、仕事はそこそこに、プライベートを充実させるために働くのも良し。
昔は娯楽が少なく、転職も難しかった。平日は仕事があるために職場と家の往復ばかり。それ故に仕事中心の生き方、つながりに自然となってしまった。
しかし今は娯楽も増え、転職率も高くなっている。そういう背景が飲み会に行かない人を多くしていった。案外、みんな内心どこかで思っていたことを素直に表現するようになっただけなのかも。
1週間の中で会社にいる時間が一番長いけど、会社の仕事、人間関係が全てじゃない。プライベートで知り合った人の方が大切なつながりだし、楽しい。プライベートを充実に出来なければ仕事にも支障をきたす。休むのも仕事です。
働き方について悩んでいる人にお勧めの一冊です。
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