【小説】きみ去りしのち(感想)
人は大人になると結婚し、人生のパートナーを得て二人の間に子供が出来る。子供が小さい頃は家族で色々な所に出かけたりして楽しい思い出を作っていく。そしてそれが長く続くものだと思い込む。
しかし、現実はそうはいかず、家族の誰かが急に死ぬことがある。それは一番年上の人間とは限らず、生まれて間もない子供も含めて。
『きみ去りしのち』はそんな家族の死を経験した主人公、「セキネさん」の視点で描かれています。
以下ではストーリーと感想を書いています。多少ネタバレですがご了承下さい。
ストーリー
主人公のセキネさんはバツイチで、再婚相手との間に息子・由紀也を授かっていました。
しかし、病気持ちという訳ではなかったにも関わらず、由紀也は1歳の頃に突然帰らぬ人となってしまいます。
それがきっかけでセキネさんは各地巡礼の旅に出ました。前妻の娘、明日香と共に。
感想
【1】対照的な二人
由紀也の死が全然忘れられず、虚無感に苛まれているセキネさん。それに対して達観しているのが明日香。
明日香の母、つまりセキネさんの前妻は、作中で病気になり、余命宣告されます。作中で発覚するのは中盤辺りですが、明日香はもう母は長く生きることが出来ないことを知っていたんだろうなと思いました。
明日香は母が亡くなることを受け入れ、母が亡くなる前に母がこれまで生きてきて見てきたものを見て知りたいと思い、離婚した後一度も会わなかったセキネさんと会おうと思ったのではないでしょうか。
自分の子供が亡くなる、自分の親が亡くなるという点も対照的に映ります。
【2】旅先で知り合う人達も印象的
二人は旅先で自分達と似たような境遇を抱えている人達に会います。
セキネさんと同じく息子が亡くなった夫婦、なかなか子宝に恵まれず離婚して、一人になってしまった男性等・・・・・・。
特に後者の方が印象的でした。子供が出来ないことにやきもきしている親と同居するのが嫌で離婚し、自分もそんな親に嫌気が差して故郷を出てしまった。
しかし、親が亡くなった後の家に住むと、故郷を出てから会いに行かなかった親が孤独から解放してくれた。
親が原因で離婚することになったので、恨む要素もありますが、辛い思いもさせてしまったという罪悪感もあり、それに気付いたお陰で孤独だと感じなくなり、ずっと故郷に住んでいた親に感謝しました。
感謝の気持ちを持つ相手がいれば、一人ぼっちじゃない。この言葉が重かったです。
【3】旅は人と触れること
この作品を通じて、「旅」の主は自分の行きたい所に行き、その土地に住む人、文化に触れることだと思いました。
見知らぬ土地にただ行くだけではもったいない。せっかく行ったのならばその土地に対して好奇心を最大限に持って触れ合う。
その土地にはその土地のルールや見方がある。それを知ることで友達と話すのとは違った刺激があり、それが自分の視野を広くしてくれると思いました。
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